そんな中、カナエがスナキツネを拾ってきた。
「この子は正真正銘動物!ちゃんと見たんだから!」
そうか……それはいいが、飼うのか?
うーん、こいつとギルドにいる男が入れ替わる可能性もあるから気をつけろとカナエに言ったものの、「えー、何でー?」という返事。
俺が自分の力を理解してなかったのと同じでカナエはギルドで人気って理解してないな。まあ、替わってるの感じたら、替わってるやつしばくけどな。
ギルドマスターに呼び出された。何事だ?
「言いにくいんだが……、そのスナキツネの親な、討伐対象だ」
言いにくいんじゃなかったのか?
「しかもA級で金もいいぞ」おぉ、スナキツネは強いのか。カナエが俯いてスナキツネをギュッと抱いている。そうかカナエの事を考えたんだな。
「いつか誰かがやらなきゃならないミッションだから、お前らに伝えた」
冒険者として色々あるんだなー。このスナキツネ(子)もそのうち大きくなったら討伐対象になるんだろうな。カナエには酷だな。
さて、「カナエ、このミッションはどうする?」と問うと、意外にも「私たちがやらなきゃっていうかね、他の人がこのミッションをやるのが気に入らない」という返事だった。
「数年後にこのスナキツネ(子)も討伐対象になることが考えられるけど、どう思う?」
「私たちはミッションをこなすのみ!それに数年後までA級のつもりはない。S級になる」
“私たち”ねぇ。数年後も俺と組んでるんだな。ほぉーお。
「で、スナキツネって弱点とかあるの?」
「んー、最近発見されたからねー。よくわかんないんだよ」
それ、討伐しちゃう?益になるかもしれないじゃん。
「まぁ、俺には弱点とかなくてもイケると思うけど」
「同感」
「討伐しちゃってもいいもんかねー?」
「ふえ?私なら気にしないでよ~」
「カナエを気にしてじゃなくて、最近発見だろ?益とも害ともわからないのに、討伐っておかしくねー?」
「そうなんだよね」
「依頼主は……」
俺とカナエはカードに送られて来ているミッションの山からこのミッションを探し出し、依頼主を見た。そして同時に声を出した。
「あの馬鹿王か……」俺たちは頭を抱えた。
確かに金払いはいいが、このミッションには裏がある。
これもノコノコとスナキツネの所に行った俺らがやられるってのが王のシナリオなんだろうな……。
しっかし馬鹿王、俺らを殺すよりも国民を労われよ……。
「カナエー、依頼料ムシしてこのスナキツネを親に戻すってミッションに変えようぜ。生態もわかってないのに、討伐って乱暴だし」
「わかった。明日ね」
「ラジャー」
翌日、このスナキツネは親元覚えてるんだろうか?今やカナエに懐いているが?うーん考えすぎか。生態がわかっていないのに、親の場所がわかるとはまた矛盾のような。うーん。
「何を一人で唸ってるのよ!」とカナエに言われた。
「いや、生態わかってないのに親の場所がわかるってなんかひっかかるんだよなー」
「あー、それは思った。依頼主はサタハユの王だし」
「だろ?またやる気かねぇ?」
「そうだねぇ。なにせ馬鹿王だからね」
呆れてものも言えない。暇なのか?と言いたいくらい俺らに固執している。
親元とギルドで伝えられていた場所に到着した。
子スナキツネは何も反応しない。……やはりか。
うーむ。と考えている暇もなくまた王直属騎士団が湧いてきた。包帯したりしてるけど、大丈夫かな?治癒魔法で治してもらえよ……。
「面倒だなぁ。今度は前より加減しないでいきますか!準備運動がランニングに変わったみたいなもんだけど。カナエ、後方支援とそいつの保護をよろしく」
カナエは思う「支援しなくても勝つじゃん……。私は保護に全力を尽くそう」
そう言うと、続々とケガ人の騎士団の山ができてくる。一番下の人が心配だなぁ。俺がやったんだけど。
「おーい、カナエ。何か縛るものない?この人たちに罪はないけど、なんとかしたいんだけど……」
「あー、それならやっと魔法使いらしい魔法使えるような気がする……」そう言って俺がしばき、カナエが動けなくする。という事になった。
そして、「この塊をどうする?」とカナエに聞いた。
「ギルドに嘘は王といえどもタブーだから、ギルドに提出する」すると、騎士たちは次々と口から血を吐いた。
「えー?私、何もしてないよ?」カナエはオロオロしている。
どうやら騎士は奥歯に毒を仕込んでいたみたいだな。証拠は残さないのか……。で……も……俺は死んだ騎士たちの服についてる“証”をブチブチっと取って集めた。ご愁傷さま、死の意味なし。
「ずいぶんな数あるなぁ。ん?生き残りじゃん。騎士的じゃないな」
「生き証人なんだから、チョーハツしないで」
こうして俺とカナエはスナキツネ(子)と生き証人を連れて、騎士の服から取った証を携えてギルドに行った。
俺への目線が痛い。こんな視線は慣れてない。無視とかそういうのは慣れているんだが……。
「ギルドマスターに会いたい」とカードとチップを少々多めに渡した。
あっさりと「お待ちしてました」とギルドマスターのところまで連れてきてくれた。
やはり猫だ。何度会っても猫に変わりない……。
そうでなくて、重要なサタハユの王の嘘の証拠の数々を見せた。
「サタハユの王かぁ……。常連みたいな感じなんだけどな」
なんでもかんでもギルドに丸投げしてたのか?金で。そんなだから騎士団が弱っちい。俺は3度目か?4度目か?の抹殺の常連だけどな。
「嘘はいかんなぁ。ところで、その男は?」
「「生き証人でーす」」と俺とカナエは言った。
「名前はなんていうんだ?」「デサロ……」
「そうだなぁ、私からのミッションだ。ライガ、カナエ、デサロをパーティに加えろ。デサロが生きているとわかればサタハユの王は口止めに急ぐだろう。既に手遅れだが。だから、パーティという形でデサロの保護をしろ。いいな。拒否権はない」
俺はカナエと2人がよかったのに、ここにきて子スナキツネとデサロが仲間に加わるとはなぁ。
カナエは「この子スナキツネの名前はどうしよう?」「テキトーにつけたらいいんじゃないか?」
そこ、問題なのか……。
そして……。
ライガ age18 HP 計測不能 体力 計測不能
戦士 MP 0 知力 4
戦士に珍しくオールラウンダー
カナエ age18 HP 1505↑ 体力 5
魔法使い MP 25033 知力 10
魔法使いの戦闘としては後方支援、家事のようなことをする
デサロ age18 HP 68902 体力 7
騎士 MP 40561 知力 5
ジョブチェンジを考えている
テキトー age0 HP 5493 体力 9
スナキツネ MP 2771 知力 3
「おい!カナエ、マジでテキトーって名前にしたのかよ」
「だって、テキトーって言ったじゃん」
「デサロはジョブチェンジ考えてんのか?と、その前に。カナエ、こいつの奥歯の毒、魔法で取ってやれ」
……と同時にサタハユの王からのスパイの可能性も調べてほしいというような手紙を渡した。
「デサロは騎士から何にジョブチェンジしたいんだ?」
「俺は魔力も低くて……」カナエの顔に青筋が浮かんでいる……。カナエの倍近い魔力あるもんな。
「騎士団で馬鹿にされてたから戦士になりたい」
俺は「ほう」と言った。内心戦士をナメるなよと思った。
「戦士ってことは俺の弟子か?」と俺は言った。
「ライガ、調子にのりすぎ!」……とカナエは言いながらメモが渡された。彼はシロ。
「戦士なら、自分を律することだな。とりあえず、毎朝剣で素振り1000回するか」と俺は言った。このパーティに戦士は2人も要らない。
「え゛?俺、戦士ムリかも……」そうだろう。戦士は甘くない。俺がここまで来るのに18年かかってる。その間、何度親父に半殺しにされたことか……。
うーん、魔法使いでも戦士でもない職業。うーん。狩人とか?それなら良さげだけど、いいかなぁ?
俺も弓できるんだよなぁ。特に頭がいいわけでもないし。うーん。
「狩人は?」カナエよ……。俺も弓できるんだけど。「わかりました」即決かよ?おい!カナエ狙いか?
デサロ age18 HP 34451 体力 7
狩人 MP 20230 知力 5
新人
おぉ、カードが自動で更新された。
「狩人なら弓の練習だな。弓はやったことあるだろ?」と俺は軽く言った。
「ないです」おいー、だから弱々なんだよサタハユ!
狩人ならそこらの草木で自作の弓矢を作れるようになるといいね。
「戦闘では後方支援を期待してるよー」
「え?カナエさんは?」“さん”をつけてきたか……。
「あいつにはテキトーを守るという仕事がある。あと、服の汚れを取ってもらったり」
「だって魔法使いは後方支援じゃ……」とデサロは言う。
「あぁ、でもねー、ライガ強すぎて支援は正直必要ないくらいなの。少なくとも魔法で後方支援は必要ないかな?」
俺はドヤ顔でデサロを見た。
「デサロー、明日から弓の練習な。的は俺が作ってやる。俺は弓もできるし」
「やっぱそうですか、ライガさんなら戦闘系を全部マスターしてるだろうなーって」
「まぁな、スパルタ親父の影響でな。ところで、俺ら同い年だし、敬語を使う必要なし」
「そうだよデサロー」カナエも言う。
「じゃ、また明日な」
どうしよう……デサロ……壊滅的に弓が下手だ。射ると矢が足元に落ちる。うーん、基礎的な筋力がないのか?何故だろう?弓に張った弦がきつすぎるのか?ちょっと緩めるか……。お、ちょっと進んだ。 という事は、緩めるもとい調節すればいいんだな。
「ねー」カナエは言った。「一番最初の弓ってライガ仕様じゃない?体力が全っっく違うんだから」
そういえばそうかも。うーむ、反省。
「カナエ、魔法でチョチョイと調節してくれよ」
「都合よく魔法に頼るんじゃない!」不条理な気がする。正当か?常人の基準がわからん。俺は自分と親父しか知らないから。
そんな中、カナエがスナキツネを拾ってきた。「この子は正真正銘動物!ちゃんと見たんだから!」 そうか……それはいいが、飼うのか? うーん、こいつとギルドにいる男が入れ替わる可能性もあるから気をつけろとカナエに言ったものの、「えー、何でー?」という返事。 俺が自分の力を理解してなかったのと同じでカナエはギルドで人気って理解してないな。まあ、替わってるの感じたら、替わってるやつしばくけどな。 ギルドマスターに呼び出された。何事だ?「言いにくいんだが……、そのスナキツネの親な、討伐対象だ」 言いにくいんじゃなかったのか?「しかもA級で金もいいぞ」おぉ、スナキツネは強いのか。カナエが俯いてスナキツネをギュッと抱いている。そうかカナエの事を考えたんだな。「いつか誰かがやらなきゃならないミッションだから、お前らに伝えた」 冒険者として色々あるんだなー。このスナキツネ(子)もそのうち大きくなったら討伐対象になるんだろうな。カナエには酷だな。 さて、「カナエ、このミッションはどうする?」と問うと、意外にも「私たちがやらなきゃっていうかね、他の人がこのミッションをやるのが気に入らない」という返事だった。「数年後にこのスナキツネ(子)も討伐対象になることが考えられるけど、どう思う?」「私たちはミッションをこなすのみ!それに数年後までA級のつもりはない。S級になる」 “私たち”ねぇ。数年後も俺と組んでるんだな。ほぉーお。「で、スナキツネって弱点とかあるの?」「んー、最近発見されたからねー。よくわかんないんだよ」 それ、討伐しちゃう?益になるかもしれないじゃん。「まぁ、俺には弱点とかなくてもイケると思うけど」「同感」「討伐しちゃってもいいもんかねー?」「ふえ?私なら気にしないでよ~」「カナエを気にしてじゃなくて、最近発見だろ?益とも害ともわからないのに、討伐っておかしくねー?」「そうなんだよね」「依頼主は……」 俺とカナエはカードに送られて来ているミッションの山からこのミッションを探し出し、依頼主を見た。そして同時に声を出した。「あの馬鹿王か……」俺たちは頭を抱えた。 確かに金払いはいいが、このミッションには裏がある。 これもノコノコとスナキツネの所に行った俺らがやられるってのが王のシナリオなんだろうな……。 しっかし馬鹿王、俺ら
ステータスがカードで表示される。ライガ age18 HP 計測不能 体力 計測不能 戦士 MP 0 知力 3 戦士に珍しくオールラウンダーカナエ age18 HP 1503 体力 5 魔法使い MP 25033 知力 10 魔法使いらしく後方支援を得意とする「なぁ、カナエ。計測不能ってなんだ?体力とか知力とか……」 つまり、俺はこのカードの見方がわからない。「うわ、ダサっ。計測不能ってそのままでしょ?少ないってことはないから多すぎて計測できないんでしょ。知力と体力は10段階評価なんだけどなー」「カナエー、治癒魔法もマスターしてよー。ケガ治してくれよ」「そうだねー、戦闘すぐ終わるもんね。ってライガ、怪我するの?」「敵が毒吐くかもだぜ?」「あぁ、そう考えると必要かも。少ない知力で考えてくれたんだもんねぇ」 と俺のカードを見た。「カナエはHP低いし体力ないだろ。HPなんて壊滅的だ」「おっしゃる通り。でも魔法使いにはステータスをアップさせることができるのです。ま、せいぜい2倍だけどね。だから戦闘頑張ってー」 のん気だな。つまり俺はカナエを守りつつ戦うという事か。それもハンデかな? やっぱ徒歩で進むんだろうなぁ。と俺はてくてく歩いていた。ふと横を見ると、カナエ!浮いてる板に座ってる。しかもお茶飲んでねー?「カナエ……そうやって歩かないから体力はつかないし、HPは低いんだ。MPの無駄遣いだ。さぁ、歩け!」と俺は歩くように促した。 30分も歩かないうちにカナエの口から「疲れた~」と。なんだよ、マジで弱いな体力など。 そんな時……モンスターが現れた。「カナエ、こいつらマジでモンスターか?またヒトが化けてたりしない?それによって全力で行くか決まるんだけど?」 ああ、そういう判断でも魔法使い必要だな。殺人は嫌だ。「純モンスターでーす!」という声を聞いてつい俺は「初めまして」と言ってしまった。 カナエは呆れていたが、次の瞬間しばいたのでOK。 なんだかモンスターを倒すと、道具と金が落ちてる……。 俺は恐る恐る「カナエ、この落ちてるのはもらっていいのか?窃盗罪とか嫌だぞ」と言うと、「本当に何にも知らないのねー。ドロップアイテム拾ってよし。強いモンスターはいいもの持
「よくぞ戻った。ライガ、カナエ」と王に言われた。 人を殺そうとしてノウノウとしてるよ……と怒りが湧いてくる。「して、この男がお前たちを騙していたという話だな」いや、王が騙していたんだけど。「この男を牢へ!」トカゲの尻尾切りか……。「ライガとカナエは王直属の騎士団に入団してもらいたい」「恐れながら、家族と相談したいと思います。カナエもいいな」 そう言いその場は帰った。 俺は正直自分を殺そうとした人を守るような職業に就くのは嫌だった。もしや、うちの親父も同じでは?カナエには申し訳ないなぁ。 俺は家に帰って、親に全部伝えた。「はぁ、あの王はまたやったのか……」と親父。 やはり親父も同じ目に遭っているようだ。その時一緒だったのがおふくろらしい。「賛成はしない」とうちは両親とも反対。「でもさー、王に背くとうちに迷惑かからねー?」「何を今更。弱っちい騎士団を抱えた王が。そんな騎士団に入ってもいいことないぞ」 それは思う。しっかし言うなー、親父。 そういう事で、俺は王の提案に背くことにした。カナエはどうするのか?「カナエも巻き込んだんだけど?」「それはカナエちゃんの家が決める事だろ」 カナエの家にてカナエも全てを家族に言った。「何だと?王直属の騎士団はすごいが、それとこれとは話が別だ!ケルベロスに姿を変えてたやつを鉄拳でミンチにしてしまいたい」とカナエ父。「実際にヒトだとわかると懐かれるの気持ち悪かったなぁ」とカナエが言うと、カナエ父は怒り心頭「いくら王と言えども許されない」 カナエの家でも反対のようだ。「家が蔑まれると思うけど、いいの?」とカナエは心配するが、カナエ父の怒りの前ではどこ吹く風のようだ。 次の日二人は王の間に行った。 王の間に入る前にカナエに伝えておいた。「俺らが反対って言った後、俺らに向けて王直属の騎士団が仕掛けてくる可能性もあるから、戦う心の準備は常にしといて」と。 王は「さて、ライガとカナエ。王直属の騎士団に入る話を家族としてきたのかな?」 入るかどうかの相談だ。入る事が前提みたいに言うな。「恐れながら、私もカナエも王直属の騎士団には入りません」 あぁ、期待を裏切らないな……。続々と王直属の騎士団が湧いてくる。こんなにいるなら俺もカナエも必要ないじゃん。 そんじゃ「カナエ、後方支援頼むわー」と言いな
そんなある日、俺・ライガとその幼馴染・カナエが王に呼ばれた。「何したの?」とカナエに言われたが、それはこっちの台詞。俺は規則正しく生活し、日々鍛錬しているだけだ。 端的に言うと、迷いケルベロス(子供)を親元に帰してほしい。という話だった。全くそんなのは王直属の騎士団(魔法使いばかり)から2名選べばいいのに。親元に戻してソッコー俺を抹殺する気じゃ?と邪推してしまう。 それはそうと、久しぶりに生でカナエを見た。 何だよ反則じゃねー?女くさい体形になってる。女だが。出るとこ出てるし。だいたい魔法使いの服って露出度高くないか?誰のシュミなんだよ? と俺は煩悩にまみれた己を呪った。~Side カナエ 私はそんなに魔力強くないのに、何でライガと呼び出されたんだろう? そう!ライガ久しぶりに生で見た。何なの男くさくなって、男だけど。肩幅広いし、胸板厚いし、背は伸びてるし、腹筋割れてる? 戦士の正装って鎧なの? ってか2人で旅って大丈夫なの?……私。 そんな俺らをよそにケルベロス(子供)と対面した。「かわいいーっ」とカナエはケルベロスにくっついた。そして噛まれていた。そうだよな、頭3つあるもんな。 とりあえずこの2人(?)は仲良くなったんじゃないか? さて、俺とケルベロスの相性は……3頭揃って唸られた。うむ、まぁいいさ。「旅立つがよい」と王が言う。言うのは楽だよなぁ。 と、俺とカナエ+ケルベロスは城下町から外へ出た。 ケルベロスに街の人が驚くという理由で城から街中は馬車で移動。馬車の中もケルベロスはカナエにベッタリ。やや俺にドヤ顔なのが腹立たしい。 俺はこの時点から何だか違和感を感じていた。俺にはできないが、カナエなら……。カナエに話したいが、ケルベロスがくっついてるなぁ。どうしたらいいものか。 あ、タイミングよくカナエ一人と思ってもどこからかケルベロスが現れる。そうだ、手紙にしよう。カナエだけが見るように、ケルベロスは見ないように。~To カナエ あのケルベロスをまず魔法で透視してみてくれないか?俺にはどうもあのケルベロスがヒトのような気がする。俺にはできない。 透視の結果次第では、俺も本気であの魔物をしばく事になるから、連絡をくれ。 と、手紙でカナエに渡した。 ヒトならセクハラだよな……。始終べったりって。ちゃんとカナエだけが
ここサタハユは言わずと知れた魔法都市。街に出て周りを見渡せば魔法だらけ。 なのにうちは先祖代々戦士の家系。俺は武術を物心ついたころからずっとしている。が、この街で我が家はごくつぶしのような(税金はちゃんと払ってマス)扱い。 戦士は近接、魔法使いは後方支援という思想も古臭く、近接でも戦士要らずで戦えるような魔法が開発されて久しい。 よって“戦士は要らない”というのが常識だ。 まぁ、俺の母親は魔法使いだから、俺はハーフなわけだが……。「ライガ、ごはんよ」 うーん、俺の飯は親父に出す飯の練習か?失敗作の感じがする。何故なら至るところに炭が……。「火加減がねー。ほら、お母さん火の魔法苦手だから」 昔、文献で見た。そして、実践した。野宿で魔法を使わずに火をおこし、料理を俺がした方がうまくできそうだ。苦手だからと炭が許されるわけではない。「水の魔法は得意だから、素材が上手に切れているでしょ?」 そう言われても……、俺ならナイフでスパっと切れるからなぁ。「じゃ、親父にうまく料理してやれよ」と俺は言い残し(食べ残しもした)、夕食後の鍛錬を庭でしていた。 しかし、魔法というのは厄介だ。 庭で鍛錬していたのを庭の塀を透かして俺が戦士の鍛錬をしているのを見たようだ。全裸じゃなくてよかったな。俺が全裸で鍛錬していたらどうするつもりだったのだろうか? “のぞき”って犯罪にできるな。あ、対策してるか。普通の家は。うちは別に恥ずべきことをしているわけではないから庭が見えてもいーよーってうちの親父がなにも対策してないんだったな。 ただし、トラップの数は多いから不審者が入ってくるのはまず無理だろうなぁ。“戦士”がバカにされている現実に親父がムキになってトラップ作ったからなぁ。 俺が鍛錬していると、壁の向こうから幼馴染のカナエが声をかけてきた。「ねー、そっちに行きたいんだけどさぁ。おじさん、めっちゃトラップ仕掛けまくってていけないよ」「魔法使いならなんとかすれば?」と俺は嘲笑交じりに言った。「なんとかなるならライガの家、不審者だらけでしょ?」 その不審者は俺又は俺の親父にのされる。でもトラップだらけをかいくぐったから相当の強者か。それならそれで、単純に手合わせをしたいもんだ。俺はしたいが、親父がのしてしまうだろう。可哀そうに。ラストトラップは親父かなぁ?「